台風17号直撃 | |
1996年9月22日、17号台風で多くの艇が被害を受けました。当日、そ の時間に陸からウォッチしていたんですが、近づける状態ではありませんでした。 9月8日にここ仮のハーバーに移転したばかりで、まだ海底のチェーンと かコンクリートブロックなどが安定していない状態だったのです。 |
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0900 | 静岡市の自宅を妻と2人で出る。 |
0940 | 新しいハーバーへ到着。駐車場から艇までちょっと遠くなった。 風雨が強い。車の中でオイルスキンに着替え防水カメラを懐に入れ200mほど離 れたハーバーへ。 ポンプ小屋の陰に数人の仲間が艇を偵察してる。風があがり顔が上げられない。 波は入っていないが、風が強い。台風はまだ来ていない。 これ以上、風が上がるのか!。 う〜む。いま、艇になにか対処しようとしても何もできない。 艇はずっと離れた海上にある。 |
1000 | 三保の先端のユースホステルへ行く。ヨット仲間たちが数人集まってダベ っている。 「風が上がったなあ」 「雨も強くなったよ」 「風向きがちょっと変わったかな」 |
1100 | フル装備に身を固め、三保の先端へ駿河湾の様子を見に行く。 ドン吹いてる。松の林の陰から身を出すとスッ飛んでしまいそうだ。こん な吹いてる中、ウインドの知人3人が飛び出していく。上手い!。ビンビン 飛んでいく。ウインドでランキングされているメンバーだ。 ハーバーを望むことが出来るが、数艇のジブファーラーが解けてジブがひ らめいている。 |
1200 | 元太洋バース、豊年岸壁に戻り、以前のハーバーをのぞく。 ウネリが入ってる。車が突風で揺れ動く。 港の中が泡立ち、スプレーで50m離れた対岸(エスパルスドリームプラザ)が 見えない。 |
1240 | 仮ハーバーの駐車場へ戻る。いきなりカッパのフードがすっ飛んだ。波しぶ きで近くの艇も見えない。仲間も10数人に増えた。でも、為すすべもない。 固まってポンプ小屋(鉄筋製)の陰に隠れているだけだ。小屋の陰から首を出 したらボクの眼鏡がすっ飛んだ(驚)。 「嗚呼!、マストしか見えないゾ。チンしてるぞ」 「ジブファーラー、みんなすっ飛んでる」 潮が上がってきた。近くの艇のマストが風波によってバラバラに揺れる。 |
1300 | 風がどんどん上がる。NE40m/SECくらいか。あるいはオーバーしてるか。 ポンプ小屋の陰から出れない。ほふく前進で行かないと前に進めない。 できるだけ写真を撮るようにしたが、フィルム切れ。車に戻ってフィルム交換。 この間を歩くのがきつい。 ヨット協会から非常召集の電話をメンバーに入れる。 |
1330 | 近くの艇のジブファーラーが広がった途端、ディスマスト!。ポンプ小屋 から《Something》まで100mくらい陸を歩いて行かないとならない。 その陸は普段は日本軽金属の土地で入っては行けないことになっているが、 今回はそんなコトは言ってられない。 |
1400 | 仲間2人でほふく前進状態で進む。あちこちでファーラーが広がっている。 ラッシングしたメインセールが広がっている艇もある。ほとんどズタズタに 切り裂かれている。ま、破れてしまったほうが艇には安全だ。途中の街路灯 のポールにしがみつく。しがみついていないと飛ばされそうだ。 猛烈な力で身体を後ろへ引っ張られてる感じ。また100キロオーバーのト ラックの荷台で立っている感じ(したことないけど)。 |
じゃ〜ん。 そこに見たモノは、前列の大型艇のほとんどが後列の小型艇に乗りかかっ ている悪夢のような光景でした。前列のアンカーチェーンが浮いてしまった のだ!。50〜40feet級の艇が横になって20feet級の艇のバウにぶつか っているのだ!(驚)。嗚呼!。 なにもできない。《Something》のバウにはベネトウ41が。その横には カタリナ42、そしてバルッチック40が。 |
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1430 | 突然、パッっと風が止まった。スプレーで真っ白くなっていた海面が元の 色になった。海も全く平ら。無風状態。 このころにはメンバーも40人くらいに増えていた。どんどん増えてくる。 テンダー、パワーポート、漁船、小さなタグボート。 みんなで動ける船をかき集めて大型艇を元に戻す作業を開始。 |
1700 | ほとんどの艇が元の位置に仮に戻せたが、仮のアンカーだ。 半分くらいの艇がスタンションが無くなってる。 《Something》の被害状態はバウパルビットに取り付けた航海灯がつぶれた。 おかしなコトにバウパルビットは無傷。 バウのステムが相手のトーレールによって削れてしまった。ハルの右前部 のゲルコートが削れてしまった。2or3カ所、FRPに達してる。 ウインディックスがすっ飛んだ。 |
多分、100パイある艇のなかの3割くらいが無傷。チン2ハイ。 でも翌日にはサルベージ船を呼んで浮いた。 ディスマスト1ハイ。ハルへの致命的なダメージ艇、数艇。 スタンション、パルピット被害30艇以上。 その中に入ると《Something》も軽傷か。 今日、被害状態をまとめるようです。 一番風が強かったのは1時少し前から1時30分くらいの間ではなかった かと思います。2時過ぎにはもう風は落ち始め2時30分頃にはベタになっ ていました。 清水港ではこんな感じでしたが、同時刻、近隣の静岡市、焼津市、藤枝市 ではこの風をあまり感じないようでした。静岡市に住んでいて仲間が協会か らの「スクランブル電話」で呼ばれビックリしてました。 当日、同じ水面の風上に土木業者の浚渫船の50m四方くらいの船が錨泊 してました。その船も走錨し始めていたんです。もし、もう1時間この風が 続いたら、もしかしたら……。 ボクも30m台/secの風は何度か経験していますが、あの風は違いましたね。 何かにつかまっていないと、風に飛ばされそうになってしまうのですが 、その掴まっている「手をはぎ取ろう」というような、風でした。 街路灯のポールに両手両足で抱きつきながらカメラを向けたら、カメラが 風で飛ばされそうになってしまいました。 50m/secって秒速だから、1時間として50*3600=180,000m/h う〜む、180Kmで走ってる新幹線の窓から首をだしたら、あんな感じな のか!。スカイダイビングも180kmくらいで落ちるっていいますね。あ んな感じなのか。 でも、風がやんだ後の仲間の対応は早かった。2時30分頃に風は急に止 まってベタになったのですが、テンダーで各艇に乗り移りました。3時過ぎ には、仲間が小さなパワーボート、個人の釣り船、小型タグボートに乗って ドカドカと集まってきて、大型艇を離しにかかりました。 チンした艇は、休日にもかかわらず小型のサルベージ船が3隻でてくれて 簡単に揚げてしまいました。 |
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《El Domingo》渡辺氏 write 清水港に停泊中の3000tの貨物船《VICTORIA》の船長さんとお話をしました。 17号台風に備えてその船は港外に避難しました。 当時港外に避難した船は全部で11隻その内の8隻が走錨したそうです。 《VICTORIA》も走錨し急いで水深12〜3mの砂地の場所に移動して双錨泊した 結果事なきを得たそうです。 その間良い場所に移れなかった船は走錨し続けたようです。 5万トンクラスの外国船は台風に慣れていないのか双錨泊でもアンカーが走り、 フルアヘッドをかけても止められず、無線で海上保安部を呼び続けて パニックになっていたとのことです。 もっとも最高に風が強かったのは比較的短い時間だったので(30分くらいかな?) 海上保安部が動き出して大騒ぎした頃には落ちついたらしく 「もういい」と無線で断っていたそうです。(笑) 「最高で48m/sは吹いた。こんなに吹いたのはこのところ経験していなかった。」 と話していました。 港内にいたのは28隻。その内の半数以上がやはり走錨し、 ぶつかりあった船もいたそうです。 《El Domingo》もまた重傷を負っています。 本日ようやく上げることができました。そのままトラックに乗せて陸送の待機中です。 被害の多い清水では手間のかかる木造艇の修理はとても頼みにくく、 油壺に運んでの修理となります。(再起がかかっています。) |