海から見た清水港
サムシングヨットクラブ 田中 満
【海の文化、スポーツ、レジャー】
1999年夏
    
 私は静岡市民ですが、この30年の間、何100日も清水の港、海で過ごしてきました。毎週末になると夏でも冬でもヨットへ乗りに清水港へ行くのです。

 30年ほど前、大洋冷蔵?という会社が、現在の清水マリンパーク付近にありました。その海側の海面をヨットの係留場所として借りたのです。清水港ヨット協会大型艇部会という組織を作って、海面を借りました。そこは「清水船溜まり」という場所でした。
今ではクラブのヨットは、100隻を越えるようになっているが、当時は15、16隻ではなかったかと思います。

 地球の赤道の長さ約4万qに匹敵する34,622qと言われている日本の海岸線(1997年建設省河川局海岸室)。そして約510Kmあるという静岡県の海岸線。その中にある駿河湾、その一部
の清水港を海の上から考察してみたいのです。
 日本は4方を海に囲まれていますが、歴史的に見ても意識的に見ても海洋国とは思えないのです。島国であっても海洋国とは思えない処が多々あります。海洋国じゃあなくて、海岸国という言葉があったら、海岸国かもしれないな…なんて思ったりしていま
す。ある一部の人たちを除いて、なんとなく海に背を向けて生活してるような気もします。
 今回いろいろなグループから提出されるであろうレポートも「陸側から見た港」「港の陸側」などと陸側の報告がほとんどであると考えられます。港を考える場合、「陸側から海、港、海岸を見ただけでは片手落ち」だと思えるのです。港は海への出口、海への入り口、街への入り口、「海との接触点」なのです。

 「人の集まる街作り、村作り」と称して海岸を埋め、ブルドーザーで山を削り、道路を延ばして、その先に箱モノを作るという観光政策は終わりつつあるかと思います。山の中に作っても海のど真ん中に作っても、同じような考え方をして、同じようなモノしか考えません。そのような考え方は終わりに来ていると思うのです。

 ヨットに乗ってと言うと、贅沢な…とか、豪華な…とか言う雰囲気がありますが、実際はゴルフ、SKIと同じです。 ヨット、レジャーボートなどは贅沢だ…という意識を外さないと、「海から港を見る」「海から陸を見る」ことを考えることができません。港は海への入口なのです。


 



港は入り口、港は玄関

 ボクたちがヨットへ乗って海から戻って来ます。沖の防波堤を過ぎて三保真崎を回り込み清水港に入ってきたときに、最初に感じるモノは、風景や街の雰囲気に「まとまり」が無いことです。多分、客船が入ってきても、乗客はそんなフウに感じるのではないかと思います。  右手にコンテナ埠頭、クレーンそして東亜燃料のタンク。正面は商業ビル、そしてその後ろに日本平。左手には不気味な茶色のボーキサイトの山。そして折戸湾という小さな入り江。風景にポイントが無く、どこを眺めてよいのかわからないのです。産業優先という景色なのでしょうか。「海から清水港へ入ってきた人々を迎えてくれる雰囲気がまったくないのです」

 どこか知らないJRの駅に降りたとしましょう。駅を降りて改札を抜けると何かしらが迎えてくれます。駅前広場があったり、大きな商業施設が正面玄関を開けて待っていてくれたりします。どんな田舎の小さな駅でも、駅前に飯屋があったり、タクシー屋があったり「あっ、ここは駅なんだ!」という雰囲気があるのです。
清水港へ海からアプローチすると、その「何かが迎えてくれる感じ」が無いのです。

 僕たちヨットはいつも正面のマリンビル方向へ向かい、船溜まりに入るのですが、海岸線に有る全ての構築物が山側を向いているのです。正面から見ると素敵なビルも、みんな海に背を向けている感じがします。徹底的に海側を無視してるデザインなのかな。清水港全体が海に背を向けている感じがしちゃうのです。
 海に背を向けている住人の気持ちが、ハッキリ形になって現れてるんで、ちょっと不気味な感じもします。
 
江ノ島電鉄、何度か昔に乗ったことがあります。七夕豪雨でなくなった清水市内の電車の例でもよいかな、西久保から袖師にかけて線路が民家の裏庭を縫って走っている場所がありましたよね。車窓に見るべきモノのない、見てはいけない風景ばかり続きますよね。あんな感じがしちゃうのです。なんとか都市が、街が海の方を向いて欲しいのです。

 30年ほど前、私はギリシャの客船に乗って太平洋を渡り、サンフランシスコ港へ朝靄をついて入港しました。ゴールデンゲートブリッジの下をくぐり港に入って行ったのです。その時、サンフランシスコの港と街はしっかりと我々を迎えてくれた記憶があります。
 港の色彩計画と称して、港に面する建物の色を統一する計画が進んでいますが、それだけでなく建物も海を向いて欲しいのです。それにより市民の意識も海へ向いて行くのではないでしょうか?。




 また、清水港周辺はは多分、日本の港の中でまれにみる優れた海洋レジャーゾーンだと思います。
・日の出埠頭、興津埠頭、三保半島での魚釣り。
・三保半島先端の海水浴場
・興津川河口の優れたサーフィンポイント。
・清水マリンパークにおけるクルーザー係留設備。
・三保半島先端内側の小型ヨット(ディンギー)エリア。
・それに伴う、ウィンドサーフィンポイント。
・それに伴う折戸湾内のセーリングポイント。
・貝島の火力発電所用水域での水上スキー(波が全くない)
・三保真崎海水浴場南側のダイビングポイント。
・その南側のジェットスキーポイント。
これらが半径2Km以内に収まっているのです。こんなエリアは他の地域では見かけられないはずです。特筆すべきは折戸湾内は波が立たないことです。そのためディンギー、ウインドサーフィン等が海へ出るのに適しているのです。

 【都市と一体になった港作り】を考えるとき、陸の上で考えるだけでなく、海の上でも考えて欲しいものです。港は海への出口、海への入り口、海との接触点なのです。ここから考えを始めて欲しいのです。



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